紡がれることを許された現在
「こんにちは、さん」
「こんにちは、望美ちゃん」
「今日は知盛、一緒じゃないんですね」
「別に、四六時中一緒にいるわけじゃないわよ?」
「そうなんですか? なんか知盛って、独占欲強そうだから」
「そうね、独占欲は強い方かしら。でも、時々は自分が放っておいてほしいらしくて、その分、わたしのこともそこそこ放っておいてくれるわよ」
「ふぅん。でも、今日は絶対に独り占めすると思ったんだけどなぁ」
「ホワイトデーだから?」
「そうそう。そういうとこ、案外こだわりそうな気がするんです」
「確かに、イベントは外さないタイプかも。あれで案外、マメな性格しているし」
「あ、もしかして、部屋がきちっと片付いているタイプ?」
「しかも、包丁の切れ味が落ちないタイプ。絶対、定期的に研いでいるんだわ」
「うわー、紙一重な感じ!」
「こちらに強要してきたら、願い下げだけどね。そこは割り切る人だから」
「でも、プレッシャーになりそう」
「それはあるわね。言われたら、逆ギレするけど」
「え!? さんでも、逆ギレとかするんですか!?」
「するわよ。わたしだって、人間ですもの」
「意外です。でも、じゃあ、ホワイトデーなのに放っておかれて、もしかして結構イライラしてます?」
「あら、そんなことないわ。今朝のうちに、もうプレゼントはもらっているし」
「さすがマメ男!」
「それに、今夜は譲くんがおいしいご飯を食べさせてくれるんでしょ?」
「あ、そうだ。聞いてくださいよ。私、見ちゃったんです。昨日、譲くんと将臣くんと三人で、大船の駅ビルにいるところ!」
「なんか、とってもわかりやすいわよね。もうちょっと上手に隠せると思うんだけど」
「きっと、近場だと見つかっちゃうから、わざわざ遠出したんですよ」
「せっかくなら横浜あたりまで出ればいいのに、詰めが甘いわ」
「でも、ばれないように頑張ってくれてるの、なんかいいですよねぇ」
「確かに。だから、これはここだけの話にして、ちゃんと驚いてあげましょうね」
「はーい!」
木を隠すなら森の中
(男子よ、乙女の観察力を侮るなかれ)