朔夜のうさぎは夢を見る

紡がれることを許された現在

「で」
「で?」
「そりゃ、結果確認だろ」
「何の?」
「レベルの違いの」
「お前にも渡したと聞いたが?」
「本命と義理だと、気合いの入れ具合が違うだろ?」
「一本のケーキを切り分けていたぞ」
「へ? じゃあ、同じもの?」
「紛れもなく、同じものだな」
「って、お前はそれでいいのかよ」
「お前らにわざわざ何か作られるより、俺の分からお裾分け、の方が腹が立たない」
「……なるほど、そういう理屈」
「可もなく不可もなく、だったろ?」
「まぁな」
「なら、いいじゃないか」
「よかねぇよ」
「何が?」
「いいか? カレシの前でこんなこと言うのもなんだけど、胡蝶さんのお菓子作りスキルは平均的だと思う」
「事実だな」
「なのに、望美の腕が譲の指導の時より上がってた」
「いいじゃないか。結果オーライだろ?」
「確かに結果オーライだけど、カラクリが知りてぇ」
「それは、可能性がありすぎて絞るのが面倒だが」
「その、思い当たる節が知りたいんだよ」
「思い当たらないのか?」
「指導教官の違い」
「まあ、それも一因だな」
「けど、兄貴の俺が言うのもアレだけど、譲の腕は相当だぜ?」
「それも一因だろう」
「なんで?」
「素人には、プロの指導はレベルが高すぎて理解が難しい」
「は?」
「望美には、譲の指導よりアイツの指導の方が、レベルが近くて理解しやすかったんだろ」
「そんなんアリかよ!?」
「結果からみればそういうことだ」
「……譲には絶対ぇ言えねぇ」
「それだけ腕がいいということだ。ホワイトデー、期待してるぞ」


敗戦処理の相談

(勝負の行く末は、立案時に決していることが多い)


Fin.

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いらっしゃらないとは思いますが、無断転載はやめてください。