紡がれることを許された現在
「あれ?」
「ん?」
「いま、玄関から音が……」
「ああ」
「……なんだ。客がいたのか」
「って、知盛!?」
「おかえりなさい」
「ただいま」
「……なんで普通に“ただいま”なの?」
「この人、最近は夕食をウチで食べるのよ」
「いったん帰って出向くのも面倒だしな」
「隣じゃん」
「なら、同じだろう?」
「うわぁ、俺様っぷりは変わらないんだ」
「まあ、前からけっこう入り浸ってたし、今さらなのよ」
「そうだな。だいたい、今日は味見の目的もあるし」
「まさか」
「そう、まさかよ」
「って、ええっ!? バレンタインだよっ!?」
「だからだろう? もらうとわかってるんだ。より好みの味がいい」
「と、主張されたら反論できなくて」
「確かにそうだけど」
「なに、邪魔はしないさ。ゆっくり作ってくれ」
「何か飲む?」
「自分で淹れる。湯は?」
「ポットのが沸かしたてよ」
「わかった」
「ごめんね」
「その分、期待させてもらう」
前日も既に当日級
(もはや夫婦、あるいは年中無休で聖なる日)