たとえ君に伝わらずとも
厳密には異なるが、まあ、ある意味では正しいと認めざるをえまい。
あいつを見出し、そして俺は囚われた。あいつのすべてに、惚れ込んだ。つまるところ、そういうことなのだろう。
にやにやと締まりのない有川の顔を見るのは不愉快だったが、その思いつきに乗ることを決めたのは俺だ。思惑がバレることにも否やはない。こんな程度のことで心が安らぐのなら、それはそれで良いことだ。
珍しいものを見つけたと言って邸に届けられた薔薇の花を、和やかな表情で愛でる横から手を伸ばし、一輪を取り上げる。
「知盛殿?」
不思議そうに首を巡らせるのを手の動きだけで制し、華やかに咲き誇る一輪を添えて、長い長い髪を襟足で括ってやる。出会った頃に比べて伸びたその長さは、共に歩んだ時間の証跡に他なるまい。
「存外、似合う」
「どのように受け取ればいいのか、悩む物言いですね」
こんな、陽光の許で燦然と咲き誇るような花では娘の気性にはそぐわないかと思っていたのだが、呑まれる気配などなく、見事に従えている。
もう少し、この娘を彩ることを積極的に楽しむようにしようと、思いがけない収穫を得た。