薔薇の下で
将臣殿、今度は一体、兄上に何を吹きこまれたのです?
おいおい、重衡。会うなりいきなり物騒な単語を使うなよ。まるで、俺が何か悪いことしたみたいじゃねぇか。
おや、これは失礼を。兄上が何やら、無害かつ見慣れぬことをなさっている折には、将臣殿に何か吹き込まれたか、胡蝶殿に何か思うことのあったか、のどちらかと心得ておりますので。
……ま、あながち間違っちゃないと思うけどさ。
なれば、いったい何を吹きこまれたのです?
………吹きこんだ、って認識を変えるつもりはねぇんだな。
何か?
いいえッ!
で?
あー、ちょっと、さ。俺にとっては懐かしい花を見かけたから、ちょっとした豆知識を披露しただけだよ。
それは、将臣殿のお国の話であり、我らにとっては物珍しい何事か、ということでよろしいですか?
そうなんだろうな。まあ、害はないと思うぜ。ホント。たださ、あの花は、贈る本数によっていろんな意味を持っているって話をしただけだし。
そのお話、詳しく聞かせていただけますね?
濡れ衣着せられっぱなしってのは、割にあわねぇしな。その代わり、お前も、知盛の何が気になったのか話せよな!
よろしいでしょう。では、僭越ながら兄上を肴に、席を設けるといたしますか。
言葉で伝えるだけでは、能がない。
それは、彼女の知らないだろう、彼の口癖。
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Fin.