朔夜のうさぎは夢を見る

幼き神の、無邪気な願い

 ゆらゆらと、滲み、溶け出す意識はただ境界をあいまいにぼかしながら、青い青い闇へと拡散していく。

――見つけたよ。暁闇に滲む、黎明の光。

 ねぇ、愛しい人。わたしの愛した悲しくも強く、そして優しき人よ。海の底にあるという夢の都は、どのようなところですか?

――お願い、私の神子の光となって。

 今からわたしは、きっとあなたの許に行く。その時には、どうぞ優しき人よ。わたしをまた、あなたの隣に置いてくれませんか。

――神子は、世界を救う定義の中で、あなたの命も繋ぐことを望んだ。

 今度こそ見失わない。今度こそ、あなたの真実を決して見誤ったりはしないから。

――だから、あなたという存在を、私達の世界にちょうだい。

 どうか、どうか繰り返されるという命の巡りの向こうでも、わたしがあなたの傍に在ることを。どうか、許してほしいのです。

Fin.

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いらっしゃらないとは思いますが、無断転載はやめてください。