朔夜のうさぎは夢を見る

折々の唄

「冬の訪れは、何に思う?」「星冴ゆさまに」
「では、夏は?」「夜の青さに」
「春は?」「月の朧なるを」
「秋」「宵の深みに」

 ――いずれも、夜の情景ばかりだな。
 ――問われてまず、思ったことです。
 ――月の、星の。宵闇に思うのではなく、陽光の下にこそ思うものもあるのではないのか?

「……冬は?」「明けの遠い黎明」
「夏は、」「夢逢瀬のあえかなる」
「春」「暁を知らぬまどろみ」
「では、秋」「虫の声にたゆとう」

 ――眠ってばかりではありませんか。
 ――それは、いたしかたあるまい?

「お前に触れている時にこそ、俺の世界は色を持ち、俺の世界は四季を巡るんだ」




(ああ、だから。ねえ、だから)
(いつまでもいつまでも、傍にいて)
(季節の巡りがいつかやむまで、いつまでも)

Fin.

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