俺と冬とお炬燵と
朝一の地獄はこれで回避できた。
次は日中だが……これは、あれだな。基本的に日向ぼっこ。それぐらいしか回避案がなかった。
ついでになるべく布団代わりの衣を干して、たっぷり日にあてておく。これをやると、夜の快適さがやっぱ段違い。
自然って、偉大だ。
つっても、毎日が晴れとは限らねぇしな。
それに、冬といえばこたつとミカンだろ。
ミカンほど甘くないけど、柑子っていうミカンな見た目の果物はあるし、こないだ帝からそれをもらった。
で、その時にこたつとミカンの話をしたら目をきらっきらにして「見てみたいなぁ」って言われたから、ついうっかり頑張っちまった。
あんまり立派とは言い難いけど、ちっちゃなやぐらを作って、火桶を中に入れる。
で、古着を何枚かもらってきてやぐらにかぶせれば、ま、こたつもどきだろ?
さすがにこれでボヤとか、笑えねぇからな。超気をつけるように釘を差しまくって帝と一緒に入ったんだけど、これは会心の出来。
あんまりにも快適すぎて、俺は自分の才能が怖くなった。
雪が降ったら絶対ぇカマクラ作って、これ持ち込んでまったりする。今からそう決めてる。
俺と冬と温泉と
これは時代背景的に諦めかけていたことなんだけど、寒くなって思い出した。
アレだ、ほら。一般家庭に風呂はなくても、山に行けば温泉のひとつやふたつやみっつ、あってもいいだろ。
てなわけで、久しぶりに湯につかりたくなったんだ。だって寒いし。
清盛に拾ってもらう前は川で顔や体を洗うのがせいぜいだったから、サウナ式の風呂しかねぇって聞いて、それでも贅沢かって結構殊勝な感じでいたんだけどな。
贅沢に慣れるのは早いもんだ。いや、ちゃんと清盛には感謝してるし、自分が恵まれてるってのはわかってるつもりだけど。
で、いつものように身振り手振り、エピソード付きの解説が必要だろうって覚悟しながら「温泉ってあるか?」って聞いたら、意外やあっさり頷かれるだけで完了。
どうやら、温泉自体はあるらしい。しかも、温泉に入りに行くってのも、感覚としてちゃんと通用した。
このギャップのなさはあんまりにも久しぶりで、逆にカルチャーショックだったかもしれねぇ。
とにかく、本当にとんとん拍子で話が進んで、気づけば一週間の温泉旅行ってことになった。
道案内兼、観光ガイド兼、いろいろお世話係は例によって例のごとく知盛。
ぶつぶつ言われたけど、それでも余りあるぐらい温泉は気持ち良かったし、酒も料理もうまかった。
やっぱ日本の冬には、温泉だよな。また来たいって合意できたんで、次回も期待できると踏んでる。
でも、理想は毎日のいわゆる風呂だ。
そんなわけで、時代劇を思い出せる限り思い出して、江戸時代の風呂のイメージで日曜大工をすることが俺の最近の目標になってる。