朔夜のうさぎは夢を見る

俺と冬とお布団と

 とりあえず、手近なところで布団から改革に着手することにした。

 とはいえ、材料は限られてるし、布がどんだけ貴重かは見ていてなんとなくわかるから、あんまりやんちゃはできねぇ。
 本当は羽毛布団みたいなイメージで家庭科ちっくなことに挑戦しようと思ったんだけど、そもそも裁縫のための糸もあんま無駄にできないってことに気がついたから、諦めた。
 諦めて、けどそこで終わらないのが俺だ。
 寝入りばなが寒くなけりゃなんとかなる。そこまで妥協すれば、どーにでもなる。
 完全木造住宅だから火を使うのはやめといて、代わりに俺専用で温石っつーホッカイロもどきを複数ゲットすることに成功した。
 こいつに布団代わりの衣を巻きつけといて、寝る寸前に回収することでとりあえずは安らかな入眠環境が確立できた。

 て、話を重衡にしたら、すっげー不思議そうな顔で「独り寝が寒いのは当然なのですから、共寝をすればよいではありませんか」とか言われた。
 なんでこいつらがこの寒い中、あのうっすい布団で平気なのかの謎はちょっと解けた気がしたけど、それは応用不可ってヤツだ。
 そりゃ、人肌の方がよっぽどあったかいだろうなぁ、とは素直に思ったけど、俺は今日も寂しく温石を抱えて寝るんだ。ちくしょう。

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俺と冬とお着替えと

 睡眠環境は多少改善された。
 となれば、次は起きている間のことだ。
 てか、起きぬけのあの殺人的な寒さを凌いで、冷え切った服に着替えるあの地獄の瞬間だ。

 とはいえ、これはけっこう簡単に改善案が思いついた。
 最初は、布団とおんなじように温石であっためればいいかと思ったんだけど、朝っぱらから温石をわざわざ用意してもらうのは申し訳ない。
 けど、都合のいいことに冬になると、女房さんの朝一の仕事に火桶に入れる炭を準備する、ってのが追加になるんだよな。
 あとは、前に服に香を焚き染めているのを見た時の方法を参考にしてみた。

 台盤所に頼んで適当な大きさの籠(ここで、火桶をすっぽり覆えるヤツってのがポイントだ)を譲ってもらった。
 あとは、俺の部屋の用意とかをしてくれる女房さんに、炭を入れたら籠をかぶせて、その上から服をかけといてもらう。これで終了。
 それこそ香を焚き染めるのの巨大版と認識されたみたいであんまり説明に困らなかったけど、煙くさいのはよくないとかで、香をきっちり焚き染めておくことが交換条件だった。
 慣れたから俺はもうあんま気にはならねぇが、女房さんが気ぃきかせてたまに香を取り換えると、そのたびに重衡とか経正とかに「おや?」ってすっげー微笑ましい感じで見られるのがいたたまれない。

 なんでもかんでも恋愛沙汰に結びつけて考えたがるのは、やめた方がいいと思うっての、もしかして単なる僻みなんだろうか。

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いらっしゃらないとは思いますが、無断転載はやめてください。