朔夜のうさぎは夢を見る

それほど深い意味はない

 チビがいるのにイベントを外すのは間違ってる。
 つーか、基本的に生真面目な生活送ってんだから、たまには羽目を外させてやってもいいと思う。
 それに、クリスマスん時にも「次は七夕だ!」って決めたしな。
 てなわけで、七夕だ。


 まぁ、なんだ。俺からみればここは『異世界』だけど『過去』でもあるからな。
 いわゆる、正しい形での『節句』は催されてるっぽいけど、俺にとってそれは『七夕』じゃねぇ。
 笹と竹の違いはいまいちわかんなかったけど、見た目一緒だから問題ねぇだろ。
 ちょちょいっと外に出ちまえば、竹林なんてごろごろしてるしな。


 今回は、竹林で拾ったでっかい葉っぱを短冊にすることにした。
 紙が貴重品だってことは、俺だって知ってる。
 ついでに飾りつけもそこらの草花にしてみたら、帝も楽しそうだったけど、尼御前が「なんとも趣深いこと」とか言って感動してくれて。
 いや、これは代用なんですとは言えなかったけど、結果オーライだろ。
 ……うん。オーライじゃないことはわかってんだけど、オーライってことにしておいてくれ。

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世の中ってヤツは

 そもそも、七夕ってのは芸事(舞とか歌とかだな)の上達を祈念するイベントなんだってさ。
 そーゆー意味もあっての「趣深い」っつー評価だったらしいんだが、いや、マジごめんなさいな感じだ。
 舞とか歌とか、俺には無理。
 これを機にぜひ、とか、そう言って迫ってくる重衡が悪魔に見えたのは俺の被害妄想じゃないって信じてる。


 で、いつものごとく宴会になった。このノリにももう慣れた。
 でも、こっからがいつもと違った。


 まあ、いつだって誰かしらが余興をするのはいつものことだ。
 それは大概重衡とか惟盛とかの派手好き&サービス精神旺盛連中の仕事だ。
 けど、今回はなんと知盛が名乗りを上げやがった。
 同席していたらしい女房さんが巻き込まれてたから、それが狙いだったとしか思えねぇ。
 まあでも、アイツが意外に宮中では何でもそつなくやってるらしいことは聞き知ってたけど、不安は拭い去れねぇ。
 だってーのに、俺から見ても見事な舞を披露してくれた。


 最近思うんだけど。アイツって、もしかしなくても天に二物を与えられたのかもしれない。
 世の中って、大概不公平にできてるもんだ。

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