朔夜のうさぎは夢を見る

お年玉

「知盛、なにやってんだ?」
「……邪魔だ」
「おい、まだ特に邪魔になるようなことしてねぇだろ」
「まだ、ということは、これから邪魔になるということ。それに、こうして相手をしている」
「いや、おい。それはお前が素直に答えりゃすぐすむ話で……って、なんだ、コレ?」
「触るな」
「………お前ってホント、ムダにスペック高いよなぁ。ンな慌てなくても、壊しゃしねぇよ」
「信用ならん」
「可愛げのない"弟"だな」
「"兄上"こそ、今宵はとみに、思いやりに欠けるご様子」
「だから、それはお前が……あー、わかった。わかったから、拗ねるな」
「……」


「で? ナニ作ってんだ?」
「……帝が、"お年玉"が欲しいとおっしゃってな」
「あー……うん。したな。そんな話」
「金品では、礼にも情緒にも欠ける」
「仮にも主上だし?」
「かといって、宝物というのも、いかがか」
「だよなぁ」
「なれば、なんぞ甘味やら、帝にとって逆に珍しき小物やらを包んではどうか、と」
「確かに、その方が喜びそうだな」


「わかったなら、これ以上邪魔をするな」
「おう。で、邪魔した詫びに手伝うぜ。どうすればいい?」
「……お前、不器用ではないか」
「愛と情熱でカバー!」
「………そこの、端切れで包むだけだ」
「って、結構あんな!」
「ついでに、新年の宴やらで会う一門の幼子らにも……とな」
「いいアイディアだな。よーし、ちゃきちゃきやろうぜ!」
「邪魔だけは、してくれるなよ」
「はいはい。わかってるって」

(本来の意味とは異なるが、まぁ)
(この方が、御子らにはわかりやすかろう)
(願いは同じ、どうか、健やかな日々を送れるようにと)

Fin.

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いらっしゃらないとは思いますが、無断転載はやめてください。