実はそもそものきっかけだった新中納言殿のご意見
気配りのできること。これに尽きる。
器量の良し悪し、舞の腕、楽の腕、字のうまさ、歌の詠み方。
何をもっても上には上がいる。
男女の別を越えて一流を知っていればこそ、それらを求めることは馬鹿らしい。
ゆえに、気配りだ。こればかりは、男のそれと女のそれではまるで異なる。女の場合は美しさにも通ずる。
貧しく調度や衣が褪せていたとしても、身辺を小奇麗にしている娘は美しい。
歌が詠めなんだとしても、気の利いた言葉をかけられれば別れの朝は名残惜しい。
暑ければ清水を、涼しければ白湯を用意し、出先から戻れば日によって衣を替える前に汗を拭うための布が用立てられている。
かくあるものを、女らしいと、俺は思うが。
(あれ? 酒の話、どこいった?)
(酒に酔った女には、肉欲としての色香を思う。だが、それ以上を得る相手もいるということだ)
(まるで、具体的な心当たりがありそうな言い方だね?)
(それを聞くのは、無粋というものでしょう?)
(……俺は、何か間違っていたんだろうか)
(なに、決まった答えはあるまい。御身の結論を、ゆるりと探られよ)