一応聞いてみた御曹司殿の場合
うまい言葉が見つからないんだが、執念深さだな。
俺の母は、女というサガの塊だったと思っている。
惚れた男の子を生み、その男の血を絶やすまいと敵対していた男のものとなり、けれど俺達にはひたすらに源氏としての誇りを説き続けた。
今はまた、新しく生きる場所を見つけられたようだが、そのお姿が印象的でな。
俺には面と向かってお会いした記憶がほとんどないが、聞くに、実に今なお美しい方だという話だ。
ならば、その根底に流れているのは執念なのだろう。
思えば、美しくありたいと願い、容姿やら舞の腕やらを磨き続けることも結局は執念だ。
ヒノエの言うように強がり続けるのも執念なら、弁慶の言うところの激しさも執念ゆえと考えられるだろう?
執心が女を女たらしめ。時に鬼と、修羅と化させる。
俺は、そう思っている。
(………アンタ、いったいどういう育ち方したわけ?)
(……まずは、少し大人しめの姫君と引き合わせるところからやり直しましょうか)
(てか、まさか九郎の口からそんな言葉を聞くとは思わなかった)
(そんなにおかしなことを言ったか?)
(天地の対としてアドバイスするとな。なんかいろんなもんを疑われるから、それ、外では言わない方がいいと思うぞ)