朔夜のうさぎは夢を見る

足の甲なら隷属

 南都からの帰り道、家長はその胸に新たな誓いを刻みこんだ。
 絶望から奇跡を仰ぎ見た夜を、きっと兵達は忘れないだろうし、家長も忘れないだろう。
 常ならば知盛のすぐ後ろで馬を駆るのだが、此度はごとごとと牛車に揺られている。
 与えられたのは、他の兵はまだ誰も知らない、仮面を外して眠る娘を守ること。
 その役に不満はない。ふと澄んだ決意を証したくなって、冷えた足の甲に口づけた。

(伊賀家長 → 月天将)

back to 俺日記 index

爪先なら崇拝

 穏やかな日常が戻ってきたと確信できたある日、娘は主と貴船の社を訪れた。
 凛と背筋が正されるような気配に満たされ、天を仰げば神が降りてくる。
 何用かと、問う神に深く頭を垂れ、許しを得てから距離を詰めて膝を折る。
 主が息を呑むのがわかった。神が驚くのもわかった。それでも、譲るつもりは微塵もない。
 果てのない感謝と選ばれたことへの誇りを篭めて、そっと、妙なる爪先に唇で触れた。

(月天将 → 高淤加美神)

back to 俺日記 index

キスをされた人がキスをして、もうひとめぐり










(伝わらない、伝わらない、)
(伝えているのに、届かない)


(政子(荼吉尼天)/ 頼朝 / 荼吉尼天(政子)/ 常盤御前 / 九郎 / 弁慶 / 還内府(小松内府)/ 知盛 / 黒陽(白陰)/ 家長 / 月天将 / 高淤加美神)
(神にはじまり、神に帰結するひとめぐり)

back to 俺日記 index

http://mugetsunoyo.yomibitoshirazu.com/
いらっしゃらないとは思いますが、無断転載はやめてください。