足の甲なら隷属
南都からの帰り道、家長はその胸に新たな誓いを刻みこんだ。
絶望から奇跡を仰ぎ見た夜を、きっと兵達は忘れないだろうし、家長も忘れないだろう。
常ならば知盛のすぐ後ろで馬を駆るのだが、此度はごとごとと牛車に揺られている。
与えられたのは、他の兵はまだ誰も知らない、仮面を外して眠る娘を守ること。
その役に不満はない。ふと澄んだ決意を証したくなって、冷えた足の甲に口づけた。
(伊賀家長 → 月天将)
南都からの帰り道、家長はその胸に新たな誓いを刻みこんだ。
絶望から奇跡を仰ぎ見た夜を、きっと兵達は忘れないだろうし、家長も忘れないだろう。
常ならば知盛のすぐ後ろで馬を駆るのだが、此度はごとごとと牛車に揺られている。
与えられたのは、他の兵はまだ誰も知らない、仮面を外して眠る娘を守ること。
その役に不満はない。ふと澄んだ決意を証したくなって、冷えた足の甲に口づけた。
(伊賀家長 → 月天将)
穏やかな日常が戻ってきたと確信できたある日、娘は主と貴船の社を訪れた。
凛と背筋が正されるような気配に満たされ、天を仰げば神が降りてくる。
何用かと、問う神に深く頭を垂れ、許しを得てから距離を詰めて膝を折る。
主が息を呑むのがわかった。神が驚くのもわかった。それでも、譲るつもりは微塵もない。
果てのない感謝と選ばれたことへの誇りを篭めて、そっと、妙なる爪先に唇で触れた。
(月天将 → 高淤加美神)
狂気も慕情も妄執も慈悲も、
伝わらないからくるっていくの