髪なら思慕
鼻先をよぎった自分と同じ色の髪に、唇を寄せたのは無論、意図してのこと。
衆人環視に等しく、けれど誰の目にも明かされないように。
敵うなら、誰彼構わず示したかった。
あなたはわたしの唯一の方。
それは、重衡の中に息づく、恋にも似た兄への祈り。
(平知盛 ← 平重衡)
鼻先をよぎった自分と同じ色の髪に、唇を寄せたのは無論、意図してのこと。
衆人環視に等しく、けれど誰の目にも明かされないように。
敵うなら、誰彼構わず示したかった。
あなたはわたしの唯一の方。
それは、重衡の中に息づく、恋にも似た兄への祈り。
(平知盛 ← 平重衡)
感極まった勢いのまま、けれど別に衝動に任せてというわけではない。
将臣としては、きっと相手が重衡なら許されると確信しての行動だった。
その判断が、正しいけれど微妙に間違っていたというだけのこと。
怪訝さをのぞかせた後、満面の笑みでそちらの趣味はないと言い放たれたのは予想外。
溢れんばかりの友愛を伝える、最良の手段だと思ったのだが。
(平重衡 ← 有川将臣)
無防備に眠りこむ横顔には、どことない疲労の色があった。
無理からぬこと。思い、申し訳なくなり、情けなくなる。
己では手にできなかったものを、軽やかに手にした異邦人。
降ろされた瞼によってもたらされた郷愁に、唇を寄せる。
嗚呼、あなたのように、なりたかったのに。
(有川将臣 ← 平惟盛)