ぎんいろ
ま、巻き込んでおいてただ「返してきなさい」は失礼だよな。
さすがにそう考えるだけの冷静さは残っていたんで、帝に交渉して、次のお題は胡蝶さんに出してもらうことにした。
色鬼の趣旨を伝えて、ちょっとしたルール変更の内容も伝えて、ついでに視線で死ぬほど俺が困っていることも伝える。
胡蝶さんはさすがにオトナだから、俺の懇願にもちゃんと気づいてくれたっぽい。
「基本的に、モノを探す遊びですよ」とやんわり帝をたしなめてから、少し考えていたずらっぽく笑う。
「では、ぎんいろ、で」
確かに釘をさしてはくれたけどさ、それって死刑宣告じゃねーの!? って頭の中で叫んだ俺は、きっと間違ってない。
考えた。俺は必死に考えた。可能性はみっつだ。
ひとつは一番考えたくない可能性、すなわち某新中納言殿が巻き込まれて、この場では何も言わないくせに、後から説教コース。
ふたつめは、まだなんとかなりそうな可能性。某三位中将殿が巻き込まれて、やんわり窘められるコース。
みっつめは、一番まっとうな可能性で、胡蝶さんの忠告が生きているバージョン。つまり、何かモノを持ってくるコース。
けど、俺には帝の考えは読めない。しばらく宙を見上げて可愛らしく「うーん」と唸ってからたったか駆けていったその背中が向かう先は、考えたくもない。
「……このようなところで、何をしておいでだ?」
だから、運悪くというか運良くというか、通りがかったひとつめの可能性を掴むことを決めた。
後からどうせ説教を喰らうなら、先に事情を説明して巻き込んだ方がまだましだ。
だってのに、ごくまっとうに、どうやら尼御前あたりに借りたのだろう銀細工を持って戻ってきた帝に「ヒトはいけないのではないのか?」と説教を喰らってしまった。
なんか、理不尽だ。