朔夜のうさぎは夢を見る

みどり

 色鬼のルールを説明して、とりあえずは難易度が低いところからスタートすることにした。
 ま、折しも新緑の季節。そのまんまの発想でお題は「みどり」。
 俺だって、さすがにこんな環境にいれば、多少は風流がわかるようになる。

 よーい、どん。でスタートして、俺は無難に、庭からもらってもよさそうな感じの枝を一振り持ってきた。
 緑、って一言で言っても、いとんな色味があるからな。どこまでを許容範囲にするかは難しい。
 とりあえず、誰が見ても文句がないだろう濃緑の葉は橘の枝。

 で、帝が持ってきたのは、何やら豪華な感じの容器。当然、ぱっと見は全然「緑」じゃない。

「……それは?」
「知盛殿の部屋からもらってきたのだ!」
「………知盛の、部屋?」
「うむ」

 自信満々で蓋をオープンにして、そりゃ、確かに納得。
 帝が選んだのは、あろうことか知盛の化粧道具。戦の時、目尻に塗ってるアレだ。

「…………俺の負け。俺の負けでいいから、まずは可及的速やかにそれを返却しようなッ!」

 この俺の焦り、まったく通じてないあたり、帝は大物だ。

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