裸エプロン
これは冗談半分で入れてみたんだけどな。
こんな悪ふざけをしかけても許されるって確信できるくらいには、俺は知盛と深い関係を築けている。
で、胡蝶さんも然り。……の、はずだ。
「おはよう、胡蝶さん」
「おはようございます。将臣殿」
意味を聞かれたのは昨日の昼だった。ってコトは、実行は昨日の夜だろ。たぶん。さすがに昼間にやらかすとは思わねぇ。
よって、今日は問答無用で叱られたり無視されたりを覚悟してたんだけど、あっけないほどに何もない。
「良く眠れたか?」
「ええ、お陰様で」
鎌をかけてもノーリアクション。胡蝶さんは案外隠し事が下手だから、これはマジで何もなかったとみていい。
「ただ」
「ただ!?」
続けられた言葉に、ついうっかりがっつり期待しちまったんだけど。
「将臣殿にお会いしたら、この季節では病を得かねないゆえ、夏まで待つのだとお伝えするように、と」
俺の食い付きに目ぇ円くして、胡蝶さんはそんなコトをのたまってくれた。
何のことかご存知ですか、って、ばっちりご存知だけど何も言えなかった。
意外な気遣いに唖然とするべきなのか、それをあえて胡蝶さん経由で伝える意地の悪さに呆れるべきなのか。
とりあえず、ボロが出ないうちに撤退することにした。