膝枕
まぁ、これに関しちゃ珍しくもないだろうけどな。お約束ってやつだ。
あえて意識させたらまた違うかと思ったんだけど、敵のレベルは半端なかった。
「どーだった?」
「……なかなかに、疲れるものだな」
「疲れる?」
予想外の反応に思わず繰り返しちまった。いやいや、お前、あんだけ普段からやらせといてその感想はどーよ。
あんまりにもあんまりなんで、ここはひとつ、"義兄"として説教垂れてやろうかと思ったんだけどな。
続きがあった。で、この辺がこの二人のハイレベルなトコだ。
「骸が重いことはわかっていたが……生きていても、頭は存外重い」
「…………あ?」
「構わんとは言っていたが、少し、仕様を変えるとしよう」
一人でなんだか納得してんのはいいけど、はたで聞いてるこっちの身にもなってほしい。
羨ましかったなんて、口が割けても言ってやらねぇぞ!
おはようのキス
昨日の夜、意味を聞かれた。つーことは、コレは今朝だろうってアタリをつけた。
そんなワケで、今俺は可能な限り気配を殺して、こっそり知盛の隣部屋に潜入している。
「やりません」
「……」
「そんな目をなさっても駄目です。やりません」
「…………」
「だいたい、なぜ今さら、かくなことを?」
「……なればお前こそ、今さらこの程度、何を躊躇う」
「それは、そうですけれど」
タイミングは完璧だったらしい。ぼそぼそと、聞こえてくる会話にうっかり顔がにやける。
「と、とにかく! ダメなものはダメです!」
「強情なことだな」
強気な胡蝶さんに、ほだされた感じの知盛。この辺のやりとりは珍しくもない。
だから、この先の展開も予想するべきだったんだけどさ。
「――ッ!?」
バタバタする気配があって、けど抗議の声が聞こえてこねぇ。
となると、状況は推して知るべし。
俺は、限界に挑戦する勢いで気配を殺しながら、限界超えの素早さで現場から退散することにした。