朔夜のうさぎは夢を見る

未知との遭遇

 忘れてたけど、こないだの殴り込みの結果報告だ。

 知盛ンところに殴り込みに行ったのはいいものの、あいにくヤツは留守だった。
 最近は"胡蝶さん"が相手をしてくれるから、扱いが楽でいい、みたいなことを安芸さん(知盛ンとこで一番偉い女房さんだ)が言ってた。
 俺がヤツの邸に行く時、かつヤツがいない時に相手をしてくれるのはたいていこの安芸さんだ。
 年齢は結構離れてるけど、今ではなんだかオトモダチな感じだ。イイ人だぜ。

 で、これまで、アイツを叩き起こして支度をさせて出仕させるのは安芸さんの仕事だったんだそうだ。
 必要があれば色々取り繕ったりもできるみてぇだけど、アイツはその労力さえ最低限をさらに切り詰めてるからな。
 俺から見ても、安芸さんのこれまでの苦労はなんとなくわかるし、胡蝶さんって女房さんが苦労してるのもなんとなく思い浮かぶ。

 まあ、いなかったら文句も言えねぇ。
 仕方ないから諦めて帰るか帰ってくるまで待つかを考えてたところで、俺は世にも奇妙なモノを見た。

 ここは知盛の邸だ。貴族よりは武士、ゴージャスよりはシンプルな邸だ。
 …………誰か、俺が見たアレを座敷童の類だって言ってくれねぇか?

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未知との接触

 ちらっと目が合っただけでガラスのハートが打ち砕かれる予感に駆られたから、こないだはあのまま帰ってきた。
 逃げたんじゃない。戦略的撤退だ。逃げるが勝ちだ。あ、いや。逃げてねぇ。

 で、リベンジした今日、何の因果か俺を迎えに出てきてくれたのは、安芸さんでもいつものちょっと若い感じの女房さんでもなくて、座敷童(仮)だった。

 座敷童(仮)は、帝よりちょっとちっこいぐらいで、水干を着てて、ちっこい木刀を握ってた。
 いいか、ココがポイントだ。
 邸ン中で、当たり前みたいに木刀を握ってたんだぜ!?
 もはやこれはアレだ。アレしかねぇ。
 血は争えないとか、蛙の子は蛙とか、そんな感じ。
 じゃなきゃおかしい。俺の常識に、木刀を握って家ン中うろついてるガキはいねぇ。
 しかも、ちょこんと小首を傾げて「父上は外出中です」ときた。
 もはやこれは決定的だろ。

 どーしよーもないんで、そこは「どうも」って言って撤退することにした。
 いいか、逃げたんじゃないぞ。戦略的撤退だ。何度だって言うからな!

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いらっしゃらないとは思いますが、無断転載はやめてください。