朔夜のうさぎは夢を見る

十七歳・未婚・孫持ち

 俺は清盛の息子で惟盛の親父の重盛さんに似ている。らしい。
 会ったことないからわかんねぇし、清盛は親父に似てはいないからな。
 だが、まあ、みんながみんな口を揃えるんだから、似てるんだろうと思う。


 で、だ。
 そんなわけだから、邸の中で幽霊を見た! みたいな顔をされることにはそれなりに慣れた。
 最近は俺に慣れたのか、そういうやつも減ったけどな。
 はじめは、惟盛の弟達にも「父上?」って言われたし、清盛の兄弟には黙って眩しそうに見られたし。
 さすがに歳が離れていて俺ぐらいの年齢の顔はよく覚えていなかったのか、知盛と重衡はほぼ無反応だったけど。
 今から考えれば、知盛のアレはリアルに無反応かもしれねぇけど、重衡のアレは仮面だったのかもしれない。
 アイツの鉄壁の笑顔は、本当に文字通り鉄壁だからな。


 まあ、現実逃避はここまでにして。
 それでも、あんなにめっちゃ笑顔で「おじいさま!!」とか言われたのは人生初体験だった。
 …………この歳で孫持ちとか。泣いてもいいですか?

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孫ができた経緯について

 よし。大分 MP が回復したんで、この前の続きを書くぞ。
 ちなみに、今日は柱の陰からちょこんと顔をのぞかせて、上目遣いで「おじいさま?」だった。
 なんつーか、俺、このままだとヤバイ趣味に目覚めそうで恐い。


 とりあえず、違うっつったらマジ泣きされそうになったんで、呼び方だけは保留にしてる。
 それでも、別人だってことは説得したけどな。
 チビは惟盛の息子だって話だった。
 美形揃いの平家の中でも一番の美形の惟盛の息子なだけあって、超美少年。いや、マジで。アイドルとかモデルとか、そんなのめじゃねぇぜ?
 素直な可愛いチビが手元にいれば、そりゃあ表情だって緩む。こう、コイツはホントに可愛い。おじいさまとか呼ばれても許せる。
 問題は、それを吹き込んだ元凶だ。


 聞けば、俺をついうっかり偶然たまたま邸で見かけたチビの手近にいたのは、何の因果か知盛だったらしい。
 それであの「おじいさま!」事件だったわけだ。
 結果オーライな感じで可愛いオトモダチを手に入れた俺だが、それで相殺にするにはあのショックはでかかった。
 つーわけで、明日は知盛ンとこに殴り込みにいくことを決めた。

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いらっしゃらないとは思いますが、無断転載はやめてください。