台所事情は主次第
知盛が風邪をひいた……らしい。
まあ、らしいってのはうっかりたまたま重衡から聞いただけだからであって、それに風邪かどうかもわからないからだ。
近代医療に馴染んだ俺にしてみれば、この世界の病気も怪我も、信じられない対処が多い。
あんだけ図太そうなくせに、あれでいて知盛は体が弱ぇ。
二日酔いとか単に眠いからとかで寝てることも多いけど。
とりあえず、今回はそういう理由じゃなくて、どうしようもなくて寝込んでいるらしい。
昔っから体が弱いって話は、清盛からも尼御前からも聞いてる。
その分なのか何なのか、知盛の邸で出される食事は、他の奴らのとこに比べてしっかりしてる。
豪華って意味じゃなくて、栄養バランスを考えたメニューっつーか、型破り? そんな感じだ。
茶も結構な頻度で出されるし(これは清盛が優先的に知盛ンとこにまわしてる)、動物性タンパク質もそれなりの頻度で出てくるし(知盛は狩が趣味らしい)、何よりあったかいうちに食える。コレが大きい。
その辺を学習した俺は、結構な頻度で用事を見つけては知盛ンとこに転がり込んでご相伴に預かってるから、アイツが寝込んで引き篭もると、食事に物足りなさを感じるわけだ。
まあ、仮にも"義兄上"なわけだし?
一日も早くアイツが復活して俺の健全な食生活もついでに復活するように、今回こそこっそり見舞いにいこうと思う(だっていつも止められるんだ。穢れが云々って)。