朔夜のうさぎは夢を見る

二位ノ尼殿の場合

 おや、将臣殿。良いところでお会いできました。
 少々、こちらに寄ってはくださいませんか?
 ああ、いいえ。難しいお話ではないのです。

 そろそろ、季節の変わり目ですからね。
 ちょうど、将臣殿にあいそうな反物が手に入りましたので、衣を仕立てようかと。
 それで、端切れをいただいたので、匂い袋なぞ作ってみたのですよ。
 まあまあ、そのように畏まらないでください。
 私にとっては、あなたも大切な息子の一人なのですよ。
 たまには、母らしいことをさせてくださいな。

 香りが薄れた頃、新しいものなり、また用意いたしましょう。
 ええ、もちろん。他にいただくことがあるなら、それを身につけてくださいませ。
 ほほほ。母としては、子が幸せなのが何よりなのです。
 あなたの幸いを祈ることこそが、なせる最大限なのですよ。

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